


雑談エッセイ
羊の国で羊と暮らす~子羊の育て方~
そんなこんなで、ようやく我がテオテオ・ファームに羊がやってきました。どちらも生後五日以内であろうと予測され、チャーリーにいたってはおそらく生後二日目くらい?
さあ、困った。大丈夫か?ゆう!?
子羊はとてもか弱い。どこの羊ファーマーさんも生まれてきた子羊の死亡率をなんとか0%に近づけることが目標ですが、その年の天候により約20%も失ってしまうこともあるそうです。春キタ―――!!と思っても、すぐに真冬に逆戻りしちゃうしね、ニュージーランド。
今年(2014年)は春が来るのが早かったし、9月も10月も比較的温度が下がらなかったと思うので生存率はかなり高いんじゃないかと思います。そもそも羊の出産時期とは春がきちんと落ち着いてからであるべきなのですが、「クリスマス・ラム」と言って、世界のクリスマスの食卓に間に合わせるよう最近は春を待たずに出産させる傾向にあるようです。これも世界の需要の高さ故、経済動物への負担は大なり小なりついてまわります。
さて、子育て。
生まれて間もない子羊への授乳は一日六回。起きてるときはほぼ三時間おきに行われます。 きちんと哺乳瓶からミルクを「吸う」ことをわかっていれば良いのですが、出産時にお母さんが死んでしまった子羊だとそれも難しい模様。 後方に逃げてしまわないよう、ガッと後ろから抱きかかえて首を固定。 その固定した手の指で口を開けさせ、哺乳瓶を真正面からくわえてもらうようにします。 とにかく根気強く。 「吸う」まで何度も繰り返し、「ミルクとは哺乳瓶から」を覚えてもらいます。 一晩かかりました~。
なんで何度も「吸う」を繰り返すかと言いますと、羊は反芻動物なので胃が四つあります。 そして子羊のミルクは二つ目以降の胃に入らなければ体が吸収できないそうで。 「吸う」ことで胃が理解して、一つ目の胃の入り口がふさがれるそうなんです。 なので子犬や子猫のように、シリンジで口の中にミルクを入れて飲ませる方法は子羊には大変危険なんだとか。 大規模なファームでは「吸う」ことを知らない子羊の運命は残念ながら一つだけ。しかし、ここはテオテオ・ファーム。 悪いけどチャーリー(子羊の名前)、吸うことを覚えてもらうよ。
結局一晩かかったけど、翌朝にはほんの少しだけ(50ccくらいかな?)吸えるようになり、翌日には一緒に来た、吸うことにかけては優等生の「こまち」と同じ量が飲めるようになって一安心。 で、この時点で気付いたけど、最初から上手なこまちと一緒に授乳すればよかったです。 特別に部屋も変えてチャーリーだけの世話をするつもりだったけど、何のことはない。 こまちが飲む様子を見て覚えるんでしょうね。 あと「隣の哺乳瓶は美味く」見えるようで、すぐに二頭は競って飲み始めるようになります。
・・・って書くと結局とってもスムーズに事が運んだように聞こえますが、実はとってもローラーコースターで、お母さん経験が無かったことでだいぶ苦労をさせました&しました。
子羊チャーリーがミルクを飲まずに一夜明けた翌朝、たまたま隣の奥さま(3人のボーイズのお母さん)が訪ねていらして「知り合いの家に子羊が生まれたけど、いる?」って。 「実は昨夜来たばっかりで・・・」と焦燥した顔でミルクを飲まないことを告げると、「まずミルクは40度にすること。そしてコロストロム(お母さんの初乳)を飲んでいないだろうから、とにかく全部殺菌!抱くときはぎゅっと抱きしめて不安がらせない!」などなど、貴重な情報をいただきました。「ミルク40度」はホントに効果的で、日に6度の授乳にくわえて温度調整と殺菌は大変でしたけど、元気に飲んでくれるなら何でもするさ。 このときから子育てがぐっと楽になります。
改めて「そういえば犬も豚も生後8週間まで(産みの)お母さんのもとで必要な栄養素と抵抗力がつくまで育ってから、飼い主となるヒトのところに来るんだよなあ」「お母さんってすごいんだな・・・」と思い知らされます。 そんな想いを一番に伝えたかったのはもちろん自身の母親でしたが、ザンネンながら私の母親は一年以上前に他界。 感謝の気持ちは伝えたつもりだったけど、お母ちゃんゴメン! 今ならもっと上手に伝えられる気がする。
ミルクを飲まない子羊を胸に抱えてヒトリで不安でいっぱいだったときに「助けて~」と救いを求めたのはこの世にいない自分の母親。 天国からすごい勢いで「遅いっ!」ってツッコんだだろうな。
母とは偉大ですなあ。
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